株式会社福井プレス |SDGs Each Together|SDGsへの取り組みを“個々から互いのものに”できたらいいな!をコンセプトに、SDGsを経営に活かす企業を支援するものです。

これが我が社のSDGs

お知らせ
 

廃棄物染めから広がる、地域のゼロエミッション

株式会社福井プレス

2022年7月27日

株式会社福井プレス
アパレル業界は国連貿易開発会議(UNCTAD)から世界2位の環境汚染産業と指摘され、サプライチェーン全体における環境負荷の大きさが課題となっています。染色もそのひとつであり、化学染料を用いて排出される廃水は決して環境にいいとは言えません。自然素材を染料に用いた草木染めを進める動きもありますが、自然伐採が加速するのではないかと危惧されています。そんな手詰まりの中、「廃棄物染め」という新たな取り組みによって持続可能な染色のあり方をつくろうとしているのが福井プレスです。具体的な事業のひとつとして、珈琲メーカーやカフェ、喫茶店において珈琲豆を焙煎したときに廃棄されるチャフ(焼けた薄皮)やドリップ粕を回収し、染料として再利用しています。コーヒーによって染められた生地はナチュラルなブラウンになり、ベーシックな衣類やファブリックプロダクトにはぴったりです。さらに染料を抽出した珈琲カスは、きのこ栽培の培土として再利用し、家庭で手軽に育てられる栽培キットとして販売しています。「廃棄物染め」によって築かれるゼロエミッション(廃棄物をなくす)の仕組みは、染色業やアパレルだけでなく飲食などの異業種とのつながりを生み、地域社会全体での環境負荷軽減をめざす動きへと発展しています。
  • 働きがいも経済成長も
  • つくる責任 つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を
  • パートナーシップで目標を達成しよう
  • 珈琲カスを捨てずに、<br>染料からキノコ培土へ

    珈琲カスを捨てずに、
    染料からキノコ培土へ

    廃棄物染めのきっかけは偶然の重なりでした。
    「妹がオープンした珈琲焙煎店を訪ねた際に、廃棄されるチャフが染料に使えるかもしれないと思ったんです。試しに使ってみるといい感じに染め上がりました」と代表取締役の福井さん。しかし、ただ綺麗に染め上がるだけでは廃棄物染めを行う意義は低いと感じていました。特に、染料を抽出した珈琲カスを廃棄すれば、けっきょくゼロエミッションにはなりません。「自分たちが諦めてしまうと、ゴミのまま廃棄され環境にダメージを与えてしまう。なんとかならないか」。そんな思いが強まるなか、偶然テレビで見たのが、珈琲カスをキノコ培土として活用している欧米の取り組みでした。福井さんは「これだ」と思い立ち、すぐに行動に移すと運よく、同じ東大阪市内の近畿大学農学部にキノコを研究している先生がおられ、協力いただけることになったといいます。

    「キノコ培土として再利用できれば、廃棄物をなくすことにつながります。カフェなどの店舗がチャフやドリップ粕を廃棄することなく、それを活かして自らのユニフォームや店舗グッズを染めることができます。さらに、染料後のカスをキノコ栽培キットにして、自らの店舗で販売することもできます。そんなストーリーが見えてきたときにはじめて廃棄物染めをやる意義があると思いました」。

    SDGsへの取り組みは、非効率な方へ向かい、持続できないことが多いです。しかし、福井さんは不思議なくらい理にかなって持続可能な形が生まれたと話します。それは視野を広げ、染色と異業種の接点を柔軟に受け入れている結果なのかもしれません。
    「珈琲染めは色素をより引き出すために重曹を用いて炊き出すのですが、その方法はキノコ培土にも良い効果があるとわかりました」。社会や環境にいい組み合わせは、これまで結びつかなかった専門分野の出会いの中にまだまだたくさん眠っていると、福井さんの話から感じます。

社会・環境・ビジネスへの影響

■アパレルメーカーとの協業で、サスティナブルファッションを
■地元の方々が当たり前ようにゼロエミッションに取り組む世界をつくる
■多業種との協業により、さまざまな廃棄物の減少を減らす

社会・環境・ビジネスへの影響

廃棄物染めは、大手アパレルメーカーや百貨店などからサスティナブルファッションの好事例として注目され、注文や協業などの問い合わせがひっきりなしにあるといいます。その一方で、福井さんは廃棄物染め事業のサプライチェーンを地元・東大阪で完結させていくことが大切だと考えています。

「遠方から注文があれば、輸送エネルギーが大きく環境負荷になってしまいます。近くにないものをわざわざ取りに行くのは非効率の最たるもの。身近な地域で廃棄物染めがスタンダードになることが持続可能性を生むと思います」。
福井さんは地元の珈琲メーカーやカフェ店との協業に力を入れる一方で、珈琲染めやキノコ栽培のワークショップを開き、地元の方々と直接交流する機会を増やしています。
「地元の方々が家庭で捨てていた珈琲カスをお持ちいただき、それを活かして古着を染め直したり、キノコ栽培を楽しんでもらったり。そんな日常が地元のあちこちで生まれる未来をめざしていきいたいです」。

福井プレスは地域との繋がりを強めることで、地域に新たなストーリーを続々と生み出しています。たとえば、地元のクラウトビール醸造所が廃棄していた麦芽を染料に再利用し、キノコ培土にも使うプロジェクトが進んでいます。そのほかにも、地元のフラワーショップで母の日に売れ残ったカーネーションや、ボタニストが化粧品をつくる際に廃棄する植物を用いた染め直し、さらには染料抽出後のカスをアウトドア用のバイオコークスに再利用することなど、廃棄物染めの文化が多業種で芽生えています。

  • 地域の一人ひとりとの結びつきを<br>大切にしていきたい

    地域の一人ひとりとの結びつきを
    大切にしていきたい

    「地域で廃棄物染めのシステムをまわしていくには、賛同者が集まることも大切ですが、商品を購入してくだされる消費者がいることも重要です。エシカルやサスティナブルなストーリーだけではなく、プロダクトそのものに魅力を感じてもらえるようになったとき、私たちのシステムを完成すると考えています」。

    そう語る福井さんは自社ブランドを立ち上げ、持続可能な生産サイクルのなかでつくられるプロダクトの開発にも力を入れています。Tシャツやエコバック、蜜蠟でコーティングした布ラップなど、いずれも珈琲染めのデザインを活かしたアイテムが特徴で、アパレルメーカーとは異なる発想で魅力的な商品づくりを心がけているとのこと。
    「今はBtoBの事業がメインになっていますが、BtoCとして個人の方との結びつきで完成する持続可能なシステムをつくっていきたいです。私たちのサービスに賛同いただき、プロダクトのファンになってもらう。それにより廃棄物染めのシステムがまわっていくことが理想です」。

    また、福井プレスの新たな取り組みは、働く従業員の姿も変えました。これまでは染色工場で働きたいという若い人はいなかったが、美大や芸大出身者を中心に優秀な方が「珈琲染めをやってみたい」と前向きに応募してくるようになったといいます。
    「廃棄物染めを始める前後では、まったく景色が異なります。以前は納期・資金・クレームのことばかり気になりネガティブな気持ちで仕事をしていましたが、今は夢がある。やっていて面白いですよ」。

  • VOICE

    VOICE

    本当に必要なSDGs事業は
    受身でつながっていく


    さまざまな業種の方と協業していますが、相手の方からお声掛けいただいたものばかりです。SDGsで重視されているパートナーシップは「つなげていく」というよりは「つながっていくもの」だと感じています。SDGs達成に向けてみんなが何をすべきかを探しているからこそ、社会や環境に本当に必要な取り組みが生まれたとき、自然と人を惹きつけ広がっていくのではないでしょうか。SDGs事業を進める際に「つながっていくもの」であるかは、ひとつの試金石になると思います。

  • 株式会社福井プレス
  • 企業概要

    会社名 株式会社福井プレス
    事業内容 染色からクリーニング、プレスまでの繊維加工サービスを展開。現在は廃棄物染めをメイン事業とし、持続可能な染色業のシステムづくりをめざしている。
    所在地 〒579-8013 大阪府東大阪市西石切町6-3-42
    電話番号 072-986-9295
    FAX番号 072-986-9295
    ホームページ https://fukuipress.com/