コンテナハウスと端材のリサイクルで
実現する建築業のSDGs
有限会社フィンテック
2023年2月7日
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何度もリサイクルができる
コンテナハウス。
店舗や避難場所、アフリカの学校まで、
その可能性はまだまだ未知数。海外発祥のコンテナハウスは、15年ほど前から日本でも店舗などに利用され始め、福岡では2016年からフィンテックが他社に先駆けて設計・施工をスタートしました。同社が扱うコンテナのブランドは、建築基準法をはじめとする日本の法規に基づいて開発された建築専用コンテナブランド「コンテナハウス2040」。同社はそのエリアパートナーとして「コンテナハウス2040福岡.jp」を運営し、福岡を中心にコンテナ建築を地域に広めています。全国にエリアパートナーが展開されているため、使わなくなったコンテナを別のエリアに持っていき、組み替えて使うことが可能。また、海上輸送用コンテナとは違い重量鉄骨ラーメン構造で非常に堅牢なことから、災害時には地域の避難場所として機能させることもできます。
コンテナはもともと海上輸送用に開発されたもの。海の上でも優れた耐久性を発揮するため、潮風や海水の影響を受けない地上なら優に50年はもつと考えられており、さらにその先の耐用年数は未知数です。「再塗装や組み替えをしながら、最終的に日本では構造上建築ができない状態になるまでさまざまな現場にリサイクルしていく予定です。まだまだ先ですが、日本の建築基準法に合致しなくなれば次は海外ですね。他のエリアパートナーと一緒にアフリカのジブチに現地法人を作り、学校を作ろうという話をしています」。
コンテナハウスへの関心は、同社の社内でも高まっています。親睦会を行なった際に、事務職の女性たちから「私たちもコンテナのことを勉強して、会社に貢献したいんです」という発言がポロッと飛び出し、それ以降、週に一度勉強会を開催するようになりました。建築基準法上のコンテナの分類や法規制など、基本から学ぶうちに女性たちの興味はさらに高まり、「ゆくゆくは店舗用コンテナショップのデザイン提案ができるようになりたい」と目標を持つように。これまで同社では男性主体だった建築部門での女性活躍も期待されています。 -
社員が一体となって取り組む
端材のリサイクル。
毎日一歩ずつの取り組みが
社内に良い循環を生み出したコンテナハウスの環境負荷が著しく少ない一方で、一般的な住宅や店舗の建築では工事の際にどうしても大量の廃材が排出されてしまいます。中には、ケースで仕入れて余ってしまった未利用材までもが廃棄されることも。この状況を「もったいない」と感じた中原さんは、端材のリサイクルをスタート。年に一度開催される地域の「流通センターまつり」に出店し、一般の人々に販売することにしました。
同社が会社を構えるのは、アパレルの卸問屋が立ち並ぶ地域。まつりでは、安く出品されている洋服や靴を目当てに毎年2〜3万人もの人々が来場します。「服を買いに来た方が、はたして建築端材に興味を持ってくれるのかと疑問に思っていましたが、試しに出してみると非常に多くのお客さんが集まってくれたんです。そこで、毎年やろうという話になりました」。自宅のDIY用に購入するお客さんから「どんな方法で使うといいの?」という質問が投げかけられることも多く、店子をする社員と地域とのコミュニケーションも生まれています。
今では、現場から持ち帰ったゴミのうち、端材は端材として保管し、それ以外の産業廃棄物についても段ボールは段ボール、その他の再生できるものは再生ボックスへ、残ったものは細かく破断してボックスへ、と適切に仕分けを行うサイクルが定着しました。これまではモノが雑多に置かれていた倉庫もすっきりと整理されています。
端材のリサイクルだけでなく、できることから一歩ずつ前進しようと、PELPをはじめとするさまざまな取り組みにも挑戦しています。一ヶ月間で使用したガソリン代や高速道路代、排出されたゴミの量などを事務所のボードに掲出しているのもその一つ。数値で可視化されるため、社員の意識は確実に高まりました。「先日は、車のアイドリングストップについて社員同士で会話しているのを聞いて感心しました。時間はかかりましたが、定着したという手応えを感じています」。
社会・環境・ビジネスへの影響
■1年間でトラック2台分の端材をリサイクル
■一つのことに全員で取り組む社内の雰囲気が醸成
■ガソリン代などの経費削減
端材を流通センターまつりで販売するようになってからは、毎年2tトラック2台分ほどの木材をリサイクルできています。また、普段は建築現場に出ない女性たちも、お客さんからの「これはどんな時に使うの?」といった質問に答えるために建築資材に関する知識を学ぶようになり、女性の活躍の場が一層広がっています。
廃棄物の細やかな分別やガソリン代の掲出など小さな積み重ねが経費削減につながっていることも間違いありません。しかし何より、SDGsへの取り組みによって中原さんが感じている一番の変化が社内の雰囲気です。「社内共通のルールを作り、長く取り組み続けていくうちにみんなが一つになれる感覚があります。風通しの良い空間が生まれ、気持ちが同じ方向に向かっていると実感します」。
一つの取り組みを全員で共有することでお互いへの理解が深まり、普段の業務でも「任せても大丈夫」という信頼感が生まれます。結果として、地球環境だけでなく社内環境にも良い影響が及んでいます。
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地球は子ども達からの預かり物。
「残す」のではなく「お返しする」
という気持ちで 取り組みたい日本の人口が減少しマーケットが縮小する中で、地球環境も含めた20年後、30年後を見据えた時、中原さんが最も危惧しているのは子どもたちの未来です。「この子たちは将来、どのように生きていくことになるんだろう、と考えると、私たちの代が率先していろんなことに取り組まなければと感じます」。
地球環境保護について論じる時、「より良い地球を子ども達に残す」という表現を聞くことはよくありますが、中原さんは全く異なる感覚を抱いています。「今のこの地球環境は、私たちが将来の子ども達から『預かっている』というイメージなんです。預かっているのだから、より良い状態でお返ししなければ。そういう意識で取り組まなければ、持続することはなかなか難しいのではないでしょうか」。
中原さんは今後も経営者が集まる勉強会や交流会で情報交換を行い、アンテナを張り巡らせながらより良い方法を模索し、社内で工夫を続けていくと言います。 -
VOICE
取り組みを数値化し社内で共有することで
社員の意識も変わっていく
建築現場で廃棄物を減らすことは難しいものです。ただ、廃棄物をきちんと分別して処分することは非常に重要。そのためには、取り組みを数値化して社員の皆さんと共有することが最も効果的だと感じています。最初は面倒に思うかもしれませんが、一つのルールを社員みんなで守ることで全員の意識が高まり、相互理解も深まります。この取り組みで築かれた信頼関係が業務を行う上でも良い効果をもたらしているので、今後はお客様からの反応や評価にもつながっていくに違いないと信じています。
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企業概要
会社名 有限会社フィンテック 事業内容 店舗デザイン・住宅自由設計・リノベーション・コンテナハウス 所在地 〒813-0034 福岡県福岡市東区多の津1-5-6 電話番号 092-623-2700 FAX番号 092-623-2702 ホームページ https://fintec.jp/