伝統の黒染めで
リ・ウェアの文化を築く
株式会社京都紋付
2021年10月15日
京都紋付は、そんなファッションの課題解決に、日本が誇る伝統的な染め技術である“京黒紋付染”で挑んでいる京都の企業です。 日本古来の正装である“黒紋付”だけを100年間以上染め続け、完成させた深みのある黒は”世界一の黒”と評価されています。特に、光を吸収して黒く見せる「深黒加工(しんくろかこう)」は唯一無二の技術。黒の深さはもちろん、洗濯しても色落ちせず、撥水効果もあるなど、品質と安全性の高さを兼ね備えています。
その黒染めの技術を活かし、シミや汚れ、色落ちなどで着られなくなった衣類を「黒」に染め替えることで、再びファッションアイテムとして楽しめるサービスを提供しています。
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黒染めによって、新たなファッションアイテムに生まれ変わる
染め替えによって、
再び楽しめるファッションを京都紋付で染め替えてみたいと思ったら、こちらのサイトから簡単にオーダーできるので、ぜひチェックしてみてください。
黒染めサービス https://www.k-rewear.jp/somekae/
ネットショッピングのような簡潔な仕組みで、気軽に染め替えを利用できることから、利用者数は右肩上がり。捨てるのではなく、黒く染め替えて新たに楽しむ。「リ・ウェア」という、持続可能なファッションのカタチを楽しむ方が増えてきています。 -
簡単にオーダーできる仕組みも、利用者が増えた大きな要因になった
染め替えで、ファッションの
新たな未来をつくるこの黒染めサービスに、もっとも注目しているのがファッションブランドやメーカー、販売店などです。SDGsの考え方が広がるなか、持続可能なファッションを模索する企業にとって、京都紋付が提案する「染め替え」はとても魅力的です。京都紋付は、賛同いただける企業であれば惜しみなく同サービスのスキームを提供しています。協力企業は自社サイトなどから染め替えを受注することができ、染め替え代金の一部はその企業の収益となります。
京都紋付は、SDGsが重視するパートナーシップのカタチも築き、ファッション業界全体で「染め替え」「リ・ウェア」の文化を広げ、ファッションの新たな未来をつくろうとしています。 -
同じ黒でも、右と左では異なる。左が京都紋付の深黒加工。より深い黒になる
ファッションを成り立たせているのは地球の資源。 だからこそ服一枚さえ大切にしたい
染め替えサービスのきっかけは、博報堂からの突然の連絡だったと言います。環境保全団体WWFジャパン、さらにリユースショップの2nd STREETが、京都紋付とコラボレーションしたいと。
それを機に2013年にスタートしたのが”PANDA BLACK REWEAR PROJECT” (※現在はサービス終了)。消費者や著名人の方からリ・ウェアしたい衣類を黒く染め上げるイベントを行い、本格的に衣類を黒く染めて再生する事業が始まります。
しかし、染め替えそのものは、以前から京都紋付では行われていました。
「衣類をつくるには地球の資源が使わるのですから、地球への負担をなくすように取り組まないといけない、京都紋付ではそんな考えが昔から根付いていました。たとえば、国際的に禁止されているアゾ染料は早い時期から使っていません。そうした精神があったから、服を捨てずに再生させる染め替えに早くから着眼し、取り組んできました」と代表の荒川さん。
デニムやTシャツといったカジュアル衣類の黒染めは、試行錯誤を繰り返しながら、技術を高めていったと言います。黒染めができるのは天然繊維のみで、ポリエステルなどの化学繊維は染まりません。また、衣類には「綿50%」といったタグ表示以外に目に見える情報がなく、衣類によってはしわ加工など、さまざまな加工が施されている場合もあります。
そのため「実際に染めてみないと、どのように仕上がるかをわからなかった。だからこそ、利用者が『着たい』というものを追い求め続ける必要があります」と荒川さん。染めることはもちろん、ボタンの付け替えやアイロンプレスなどのオプションサービスも充実させ、黒染めサービスを形づくっていきました。
社会・環境・ビジネスへの影響
■崩壊の危機にあった京黒紋付染めの技術を、染め替えにより継承
■染め替えを前提にした服づくりが広がりはじめている
■サスティナブルなファッションを楽しむ消費者が増加
黒染めを前提にした服づくり。黒染めの前も、後も、着てみたい!
京都紋付が提供する黒染めサービスは、ファッションの価値観や楽しみ方を大きく変えています。実際に、「リ・ウェア」の文化をつくり、消費者はもちろんファッション業界全体を動かしつつあります。
ファッションを変えていく力がある、その根底には「黒染めの面白さ」があることも見逃せません。荒川さんは洋装の染め替えにチャレンジするなかで、「これ、かっこいいやん」「これ、着てみてみたい」という興奮が何度もあったと言います。
さまざまな加工や化学繊維の混紡などにより、意図したように染まらないこともあります。しかし、それがいい味わいを出し、ファッションとしての価値をさらに高めていく。
つまり、染め替えは、服を再生させるというより、もうひとつのファッションのカタチを提供するものなのです。
そこに着眼し、今、京都紋付が取り組んでいるのは、衣類をデザインし製造する段階から、染め替えることを前提にして服をつくっていくという試みです。
すでに多くのブランドやメーカーとコラボし、服づくりが進んでいます。完成した衣類は、黒染めの前と後を、“ビフォー・アフター”として提示。同じアイテムで異なるファッションを楽しめることを提案します。百貨店でこのビフォ―・アフターをディスプレイしたところ、非常に好評で、予定の期間を終えても展示が続いていると言います。
黒染めが前提にあるのなら、シミや汚れができても気にすることはありません。新たな衣類にアップサイクルできるのだから。これまで以上にファッションが楽しくなります。
協会を設立し、染め替え文化をもっと広げていく
京都紋付は、染め替えの文化を広げるために、染め屋や衣類メーカーなどが協力し、染め替えによる衣類のアップサイクルに取り組むことができる協会をつくろうと動き出しています。
染め替えを前提にデザインされた服には、この協会が認証マークを発行し、販売の際に表示できるようにします。それは、「衣類を捨てずに、染め替えて楽しもうよ」という生産者の想いであり、サスティナブルなファッションを提供する証でもあります。そのことをわかりやすく消費者に届けることで、より「リ・ウェア」の文化が根付いていくのでないかと、荒川さんは期待されています。
「日本には、黒染め以外にも、さまざまな染めの文化があります。この協会には黒染め以外の染め屋にも参加していただき、いろんな色の染め替えを楽しめるファッションの世界をつくっていきたいです」。
協会がプラットフォームになり、ファッションブランドやメーカー、販売店と、染め屋が交わっていくことで、「リ・ウェア」の文化はもっと面白いものになっていくに違いありません。そして、日本の伝統から生まれた新たなファッション文化が、SDGs達成への大きな力なっていくことが、京都紋付が望む未来です。
さらに、京都紋付では、染め替えの売り上げの一部を、貧困や健康、教育などの問題に取り組んでいるNPO・NGO・支援団体などに、消費者が自ら寄付できるようなスキームもつくろうと計画しています。SDGsが取り上げる問題を自分事として捉え、その解決に少しでも力になりたいという想いが込められています。
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VOICE
伝統産業を未来に継承していくためにも
サスティナブルな考え方が欠かせない
好きなファッションアイテムも、シミや汚れが目立つようになれば、捨てるしかありませんでした。しかし、染め替えることで、また新たな顔を持ち、楽しむことができます。その結果、数百万トンという廃棄を減らすことができます。日本の伝統産業から生まれる未来のファッション文化を、日本から世界へ。日本の伝統産業には、まだまだ多くの可能性があり、SDGsはそれを見つけ、絶やさず継いでいくきっかけにもなると思います。
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企業概要
会社名 株式会社京都紋付 事業内容 大正4年創業以来、黒紋付だけを100年間染め続けてきた染め屋。その伝統を活かした染め替えにより、「和の黒」を未来に継承していく。 所在地 〒604-8823 京都市中京区壬生松原町51-1 電話番号 075-315-2961(代表) FAX番号 075-326-1277 ホームページ http://www.kmontsuki.co.jp/